2024/07/26
2024.7 東京都知事選挙に向けたU30緊急意識調査
Z世代が演出した石丸氏の躍進
3選を果たした現職の小池百合子氏と前参議院議員の蓮舫氏の一騎打ちと目されていた7月7日の東京都知事選で、票を伸ばして2位に食い込んだ石丸伸二氏の躍進の背景には、1990年代後半以降に生まれた「Z世代」と言われる若者を中心とした支持の広がりがあったことが、世論調査会社「グリーンシップ」(本社・東京)が投票直前に30歳未満の都民を対象に実施したスマホアンケートで裏付けられた。この年代層の投票先は小池氏を大きく上回ってトップ。日本の未来など社会問題に関心が高く、政治参加への意識も強い。今後の様々な選挙シーンに影響を与える存在として動向が注目される。
調査は7月6日から7日にかけて、全国の携帯電話に架電し、都内に住む30歳未満の有権者に調査協力を依頼して、承諾された方へSMSでURLを送信してWEBアンケートへ誘導する形式で、425人から属性も含めた計21の設問について回答を得た。年代別の内訳は18ー19歳が3%、20ー24歳が25%、25ー29歳が72%で、大半をZ世代が占めている。
調査結果によると、すでに期日前投票をすませていた29%を含め、全体の94%が投票する意向を示し、投票先として31%が石丸氏を挙げた。これに小池氏の24%、蓮舫氏の18%が続く。石丸氏と小池氏との差は7ポイントで、小池氏と蓮舫氏の差の6ポイントを上回る。30歳未満の層に限れば、かなり有意な差がついていたと考えられる。
石丸氏を支持する人たちが何を基準に投票先を選ぶかの設問では、「人柄が信頼できる」が26%で最も多かった。小池氏の場合は「過去の実績がある」の28%がトップで「人柄」は13%に過ぎない。蓮舫氏も最高は「掲げる政策が自分の考えに近い」の22%で「人柄」は18%。石丸氏の人柄への好感度は群を抜いて高い。
石丸氏は出身地の広島・安芸高田市の市長時代に、議場での市議の居眠りをSNSで指摘したことから市議会と対立し、その後、議場でのやり取りや記者会見の動画をインターネットで配信して一躍、その名を知られた。メディアによると、今回の選挙でも、街頭演説などの模様を撮った動画をボランティアによって組織的にユーチューブなどで拡散する手法で浸透を図ったという。
石丸氏支持者は、過去にない56人もの候補者が乱立した理由について、最多の26%が「インターネットなどで情報発信がしやすくなった」と答えた。若者の政治参加に何が必要かの設問には、断トツの40%が「デジタルツールの活用により、常時、政治家との相互交流ができるようにする」を挙げた。これは、小池氏支持者の16%、蓮舫氏の10%に比べると、際立って高くなっている。
若者の政治離れの原因を尋ねた設問で、「政治家のレベルが低く、期待感が持てない」が石丸氏支持者では25%と、同じように小池、蓮舫両氏の支持者の数字を上回っていることと合わせ、
生まれた時から身近にインターネットがあるZ世代が、デジタル世界を通して候補者に親近感を抱き、既存の政治家ではない目新しい存在に世直しの期待をかける構図がうかがえる。
現在の生活上の悩みや不安を訊いたところ、3氏の支持者でいずれも「収入」「物価高」「税金」がトップ3を占め、比率も大差はなかった。ただ、関心ごとをさぐる設問では、小池氏支持者が①景気・経済動向②日本の未来③子育て・教育の順に高い関心度を示したのに対し、石丸氏支持者は①②は同じだったものの③に税金が入り、蓮舫氏支持者では唯一、ジェンダー平等が3位以内に食い込むなど、違いが出た。
石丸氏支持者には比較的、景気や経済動向、税金といったお金を巡る問題への関心が高く、閉塞感のある現状の生活の改善を求める傾向が強いことがわかる。蓮舫氏が環境面から反対の姿勢を明らかにし、当初は選挙の一つの焦点になるかも知れないと見られた神宮外苑再開発問題の是非を訊くと、小池氏支持者では賛成派が55%、蓮舫氏支持者では反対派が71%を占め、はっきり態度が分かれたのに対し、石丸氏支持者は「興味がない」が31%と最多で、素っ気なかった。
石丸氏は政治家になる前、大手都市銀行のアナリストとして経済分析に携わっていたキャリアがあり、ネットの選挙活動でもPRの核にしていた。そのあたりも、投票意識に大きく影響したと見られる。
9日付けの読売新聞朝刊によると、与野党双方とも都知事選の結果を受けて、石丸氏の今後の動向に神経を尖らせているという。仮に国政進出を目指すとなれば、既成政党に批判的な無党派層の受け皿となって票を奪われる恐れがあるからだ。
事実、スマホ調査でも、石丸氏支持者の79%が支持政党なしと答えている。一方で、過去の選挙の投票経験を尋ねると、石丸氏支持者は「すべて行っている」は55%にとどまり、小池氏の74%、蓮舫氏の82%に大きく水を開けられていた。「行ったことはない」も7%いた。つまり今回は、これまであまり投票に加わらなかった若い無党派層が大きく動いて石丸氏に票を入れたことになる。選挙を含む政治的活動への今後の参加の意向でも、50%が「機会があれば参加したいと思う」と答えている。今回、投票率は60・62%と前回を5・62ポイントも上回った。与野党の危惧は、あながち的外れではなさそうだ。
メディア各社が投開票日当日に投票場で行った出口調査などで女性の支持が多かったのは小池氏で、概ね40%台の得票率と報じられていた。スマホ調査の女性の比率は全体の21%にとどまっており、調査でもはっきり男性得票率の高さが出た石丸氏を巡る前述の数字の結果には多少、バイアスがかかっている可能性はある。
だが、少なくとも、石丸氏が選挙広報に掲げた「東京を動かそう」のスローガンの一端は、若い都民の投票行動においては十分、達成されたというべきだろう。
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